ご相談に来られる方の9割は、妊娠中、産休中のご夫婦です。人生の中である意味”平常ではない時期”に家購入を検討するケースが多い傾向です。
「いずれはマイホーム」と考えている場合、どのタイミングで家を購入するのがベストなのか思い悩んでいませんか?この記事では、各種調査結果を参考に家を買うタイミングや産休・育休中に家を買うメリット、そして注意点について家専門FPが解説いたします!
みんなどうしてるの?
家を買った時期とタイミング
家の購入経験がある方500人を対象した調査結果を見てみましょう。
出典:株式会社AlbaLink 「 家を買ったタイミングに関する意識調査」※対象は家購入の経験がある人500人/男女比は女性63.4%、男性36.6%人)/年代は30代39.8%、40代31.6%、50代16.8%、20代7.6%、60代以上4%、10代0.2%/調査時期は2021年11月
家を購入した年齢
家を購入した年齢で最も多かったのが31歳から35歳です。 全体の68%が、30歳前後に購入していることがわかります。 また、平均年齢は33.3歳です。
住宅ローンの中には「完済年齢が80歳まで」などと決まっているものがあるためか、決められた完済年齢や定年退職までにローンが終わるように30代までに購入に踏み切る人が多いのではないかと推測されます。
家を購入したタイミング
家を購入したタイミングで最も多いのは「妊娠、出産」の時期、 ついで「 子供の入園・入学」「結婚・婚約」と続きます。全体の約78%は、婚約から子どもの入学までに家を購入していることがわかります。
78%の方が購入した理由
【妊娠・出産】のタイミングに購入した理由
・子どもが生まれると車の移動が増えるので、駐車場が敷地内に欲しかった。また、子ども部屋やお風呂に十分な広さがないと狭いため(20代女性)
・アパートだと子どもの泣き声や足音などで迷惑になってしまうと思い、一戸建てに住みたかった(30代女性)
・アパート暮らしだったため、将来の子ども部屋の必要性を感じて(50代男性)
「子育てするならアパートでは狭いと思った」「騒音が気になった」「子育てで実家のサポートを得たかったから、実家の近くに家を建てた」などの回答があり、子育てしやすい環境を求めて家を購入する人が多い様子がわかります。
なお、第1子ではなく、第2子・第3子の妊娠・出産をきっかけに購入した人も多数いました。第2子以降の誕生をきっかけに家を買った人からは「子どもは2人ほしいと思っていて、家族構成が決まり、間取りを考えやすくなった」などの回答がありました。第1子出産時に家を購入するなら「この先、子どもが増えても快適に過ごせるか」という視点も大切になりますね。
【子どもの入園・入学】のタイミングに購入した理由
・小学校入学後の引っ越しは子どもにとって可哀想だと感じたため、入学前に購入しました(30代女性)
・のんびりした子どもだったので、評判のいい公立小学校に通わせたかったから(40代女性)
・中学校から私立に行くため、交通機関が便利なところにしました(50代男性)
「園・学校に通いやすいように」「勉強部屋をつくるため」などの回答が寄せられています。また「入学後に転校しなくていいように」という意見も目立ちました。転校すると子どもが大変なのはもちろん、親も保護者間の人間関係を一から作り直す必要があって大変ですよね。なお、小学校の「就学時健康診断」や「入学通知」のあとに引っ越すと、役所での手続きが必要になることも。スムーズな入学準備のためには、引っ越しのタイミングも重要です。実際「入園・入学の1年ほど前にマイホームを購入して引っ越した」という人もいました。
【婚約・結婚】のタイミングに購入した理由
・心機一転、2人で新しいところに引っ越したかったから(20代女性)
・結婚し、2人でローンを組めたので(30代女性)
・結婚したときに、今後子どもができたときのことを考えて戸建て住宅を購入しました(40代男性)
「若いうちにローンを組むほうがいい」と考え、結婚と同時に購入したという体験談も寄せられました。ただ、子どもが生まれたあとに「子育てに向いていない間取り・立地だった」と気づくケースもあります。結婚のタイミングで購入する場合は、今だけを考えず「将来の家族構成」や「住み替えの可能性」についても考慮したいですね。
産休・育休中に家を買うメリット
共働きのお二人にとって、「産休・育休」という人生や仕事の中である意味”ボーナス時間”を家購入に充てることにはメリットがありますのでご紹介します。貴重な時間を有効に活用するために参考にしてください。
打ち合わせや情報収集に時間をかけられる
時間に融通が利くことが最大の利点と言えます。 マイホームは欲しいと思ってもすぐに買うことはできません。 完成済みの建売やマンション、また中古住宅でも物件探しから物件の売買契約や住宅ローンの審査、契約手続きなどで時間がかかります。 また、注文住宅の場合は、土地選びや住宅会社選び、間取り検討、工事が始まってからも水回り設備や内装などの打ち合わせに時間がかかります。仕事復帰前の育休中なら隙間時間に物件を探したり、打ち合わせの日程も調整しやすかったり、効率よく計画を進めることができます。
夫婦で話し合う時間がある
物件探しや内覧や現地の見学、また各種打ち合わせや手続き、注文住宅であれば、素材や色決めなどの宿題に夫婦で話し合いながら、進めることができます。産休前や仕事復帰後の場合は、仕事や家事、育児で時間をゆっくりと作ることが難しいかもしれません。
保育園入園と仕事復帰の計画がスムーズに行える
一般的に保育園に入園しやすいのは、子供が0歳の4月と言われていて、入園と仕事復帰の計画がスムーズに進めることができます。できるだけ計画的に進めたいとか、産休からあまり時間を開けたくない(早く復職したい)という方もいると思います。もし、待機児童となってしまうと、収入が少ない期間が伸びてしまいますし、勤務先の雇用環境によっては復帰できないことも考えられます。
住宅ローン審査の悪影響を避けられる場合がある
仕事に復帰することを条件に住宅ローンの利用が可能になります。例えば、パパが主の債務者(住宅ローン申込人)で復職予定のママが連帯債務者や連帯保証人としたり、場合によってはママが主債務者として住宅ローンを利用することもできます。妊娠中の場合も同じような取り扱いになるでしょう(金融機関の担当者が妊娠していることを知っている場合)。詳しくは後述しますが、公務員や上場企業の正社員でない場合は、メリットと言えないこともあります。
育休中に家を買う時の注意点
育休中に家を買うメリットがある一方で注意したい点があるので解説します。
ママの体力回復と子育て疲れ
まずは、ママの体力の問題です。出産時には非常に多くの体力が失われます。体力が回復しないうちに 激しい活動を行うと、産じょく熱や産後うつ、乳腺炎などの症状を引き起こす可能性があります。少なくても1ヶ月間は体力回復のため、無理のない生活を送りましょう。また、初めての子育てが始まります。睡眠時間の確保やストレスが溜まらないような配慮も必要ですね。
収入が減少する
産休・育休中は収入が減ることが一般的です。出産一時金や産前の働き方によっては、育児休業給付金を受け取ることができますが、給与の50%〜67%程度となり、収入は減少します。うまく保育園に入園できれば、早期に仕事復帰し収入を確保することもできますが、入園できない場合は収入が少ないまたは、収入がない状態が継続し、パパの収入に頼るしかありません。マイホーム購入では、住宅ローンで支払えない項目があり、手元の現金・預金の管理や資金計画がシビアになります。
住宅ローン審査に悪影響がある
前述したように、育休中のママも債務者、連帯保証人として住宅ローン審査の評価対象となることはできますが、選択できる金融機関が限られたり、比較的、金利(利息)が高くなったり、借入額の上限など諸条件が悪くなることが考えられます。仕事に復帰する証明書など金融機関に提出する資料や手続きも増えることが一般的です。状況によっては、パパ単独でしか借入できないことも踏まえて検討する必要があります。金融機関によって審査するポイントが異なりますが、主に雇用形態・勤務先・職種・勤続年数・年収・預金等の金融資産残高・保有資格などがチェックされる点です。
子どもの機嫌とコンディション
子どもの機嫌や体調、タイプによっても家購入の難易度が異なります。ママやパパに時間や精神的な余裕を与えてくれない場合は、思うように進まないことがストレスになったり、物件選びやこだわりの妥協に繋がることもあるでしょう。具体的には、以下のようなことが考えられます。子育てに手がかかってスマホなどで物件探しの時間が作れない、物件の見学等で小さなこどもを連れていかなければいけない、展示場に行ってもしっかりと話を聞けない、子どもの体調が悪く打ち合わせの日程を変更しなければいけない、子育てと家事で夫婦で話し合う時間が作れない、 第二子であれば、上の子どものめんどうも見なくてはいけないことが考えられます。 ご両親が奈良で近くに住んでいたり、時間や体力に余裕があれば子どもを見てくれるなどの場合は、大変心強いと思います。住宅メーカーでも乳幼児を見てくれるなどの環境によって難易度が変わってきます。
引っ越しまでの期限がある場合
もし、新居への引っ越しする日をあらかじめ決めている場合は、その期限に合わせて計画を進めることになります。仕事復帰や保育園入園手続きなどの理由で時間が限られていることもあるでしょう。例えば、「3月に入居したい」となれば、マイホーム購入を逆算して計画することになり、土地探しや住宅会社選び、各種打ち合わせに時間がかかる注文住宅は候補から消して、完成済の建売住宅や マンション、中古住宅を中心に考えていくことになるかもしれません。仕事復帰のタイミングか理想の住まい、どちらを優先するかでゴールや計画が変わってきますね。
次の出産計画
妊娠中または出産後で想像できないかもしれませんが、第2子や第3子の計画も忘れてはいけません。普段の相談業務の中で「次の子どもとは2歳空きが良い」と考える方が多いように感じますが、それが実現するとなれば、経済的な面や住宅ローン審査の問題が大きくなります。授かり物ですので、 希望通りに進める事は難しいですが、あらかじめ計画しておかないと最悪の場合、生活が立ち行かなくなることも考えられます。
「家購入のお金でよくあるご質問」に回答します
賃貸か所有か
「家賃がもったいない」が家購入の理由の多くを占めています。 僕も約10年間、家賃を支払った後に家を買いましたので同じように感じたこともあります。 賃貸か所有かの考え方はいろんな視点や個々の価値感、環境が異なるので正解はありません。子育て環境や住宅費の損得、老後生活を見据えた上で、あなたや夫(妻)の価値観に合えば、どちらも正しい選択だと思います。 しかし、家を買ったあとは賃貸暮らしに引き返すことは、容易ではありませんので慎重に見極めて前に進む必要があると考えています。
ローン完済年齢=退職年齢?
家を購入する方が30歳前後が多い調査結果がありますが、理由の1つに「退職までにローンを完済したい」というものがあります。 住宅ローンの返済期間を最長の35年、退職年齢を35年後の65歳と想定し、会社から給料をもらえる間に完済するという考え方です。安定した収入がある間に返済する計画は見通しが立ちやすいですし、安心ですね。また、一部の金融機関の住宅ローン審査では「65歳までに完済できるかについて、年齢や退職金の有無や金額」について確認されることもあります。一方で住宅ローン審査さえ問題なければ、退職年齢を超えた完済年齢でも問題ないケースもあるので「30歳までに」と焦らなくても大丈夫です。繰上げ返済や資産運用の計画、将来の働き方や金融資産残高を計画・想定できていれば、一般的な退職年齢に囚われる必要はありません。
頭金を貯めるために家賃を支払っているのがもったい?
頭金を貯めるために家賃を支払っているのがもったいないのではと悩んでいませんか? 家購入には、住宅ローンで支払えないものもあり一定額の現金が必要です。 また、住宅ローンの借り入れ額を減らすために頭金を準備したいと考えていることもあるでしょう。この問題を解決するためには、 いくら必要なのか、 いくら貯めるのか、 貯蓄できる金額、 支払う家賃 を 整理して計算してみましょう。
育休中の家購入で”やってはいけないこと”と”やるべきこと”
マイホームの購入は、人生で最も高い買い物です。住宅ローン返済は、家賃の支払いのように感じますが、それは全く異なるもので土地購入や建物工事、住宅ローン融資の契約をしてからでは後もどりできません。ある意味、子育てや今後の働き方を確定する契約でもあります。親や周囲の友人、同僚が家を買ったからではななく、本当に欲しいのか、必要なのかを育休中の少しゆとりのある時間で考え、話あって欲しいと思います。
では、育休中の家購入でやってはいけないことと、やるべきことをご紹介します!
「家を買おう」となったら最初にやってはいけないこととその理由
▼不動産会社に物件を紹介してもらう
ご希望の通り、物件を紹介してくれます。しかし、あたたと不動産を売るプロでは、不動産に関する知識や経験は雲泥の差です。忘れてはいけないことは、不動産会社は物件を売ることが仕事(使命)です。営業マンが悪い人だと言っているわけではありません。物件を見学すると欲しい気持ちはピークとなり(本当に欲しくなります)、思わず話を進めてしまうこともよくあることです。
▼住宅会社にプランと見積もりをもらう
住宅展示場に行くと、あらゆるタイプのマイホームが並んでいます。実際にモデルハウスに入ってみると、ワクワクして楽しいです。しかし、プラン(間取り作成)や見積もりの依頼はまだ早いです。それらの資料をもらってからは、営業担当からの連絡が、たびたび入っては次のアポイントを取られて、(無駄になるかもしれない)時間と労力が失われていきます。不動産会社と同様に売るプロであることを覚えておきましょう。
▼住宅会社の提携FPに相談する
住宅会社に行くと、営業担当からライフプランシミュレーション作成のために提携FP(ファイナンシャルプランナー)を紹介されるでしょう。しかし、提携FPに相談してはいけません。なぜなら、僕も提携FPをやっていた経験からわかるのですが、①家を買ってもらうためのライフプランシミュレーションが出来上がる②ついでに生命保険を勧められるためです。提携FPは、「誰から報酬をもらうか」を考えてみればわかります。残念ながら、あなたの身になって考えてくれるかどうかはわかりません。
やるべきこと①家が欲しい動機や目的を明確にする
子育てのために家購入を考えることが多いと思います。家の中のシーンで子どもが物音を立てると階下(近隣)の人に迷惑、、と感じて「静かにしなさい」と思ったり、行ってしまうことが嫌になることもあるでしょう。そこでマイホームを考え始めるたと伺います。そんな時に、「戸建ての賃貸の選択肢は考えてみましたか?」とご質問することがあります。そうすると、「考えたことがなかった」とか、「考えてみたが見合う物件がなかった」、また「自分の城が欲しい」「自由な間取りにしたい」など他の購入動機があったりします。動機や目的は、ご夫婦同じではないと思うので、お互いの考えや思いを明確に共有することことで、方向性が見えてきます。
家賃補助をもらっている方が得じゃない?を確認しましょう
家を購入すると家賃補助や手当が減ってしまうケースです。家は欲しいけど、経済的な面で家賃補助をもらっていく方が得じゃないかと考えることは間違っていません。所有に強いこだわりがなければ、両方の視点で将来の経済的な違いについて比較してみましょう。
やるべきこと②マイホームにかけて大丈夫な予算を明確にする
マイホームにかけて大丈夫な予算を明確にすることによって、土地にいくら、建物にいくら、諸費用にいくらと振り分けることができます。そうするとで限られた時間で計画を進めることができます。土地(エリア)や住宅メーカーを予算から絞り込むことで、資料請求の手間や話を聞きに行く時間、エネルギーを無駄なく使うことができます。
マイホームにかけて大丈夫な予算とは、マイホーム以外のイベントを洗い出し、必要を資金を計算することで出てくる金額のことです。子育てや日々の生活、旅行や趣味、そして働き方の希望は、みんな一緒ではありません。あなたのマイホーム予算を知ることから始めましょう。
もし自分でできない場合は、売り手ではない第三者立場の専門家に相談しよう
マイホームにかけて大丈夫な予算を算出することが、最も理想的で望ましいです。なぜなら、これからの人生計画、そしてお金について詳しくなるからです。ご夫婦で一緒に、または得意な方が計算してから共有してもOKです。
しかし、自分で計算するのは難しい、できるかもしれないけど調べごとに時間がかかる、ただでも子育てや仕事、家事で忙しいという方は、時間とエネルギーを効果的に使うために売り手ではない第三者立場の専門家に相談しましょう。
当然、費用はかかりますが、ご自分で勉強して、正しいかわからない情報を収集したり時間をかけても納得いく答えが見つかるかは不明です。
賢いお金の使い方は、あなたや夫(妻)が仕事で得たお金で専門家に依頼する方法です。